boulangerieの暇つぶし

元パン屋で都内タクドラの雑記。パン、料理(自炊)、音楽、映画、インテリア、酒、車、旅行...元嫁と質素な楽しい暮らし。

チェット・ベイカー

チェット・ベイカー:1951年に除隊後、ロサンゼルスの西海岸ジャズ・クラブで演奏するようになる。マイルス・デイヴィスに影響を受けた叙情的なトランペットサウンドで有名となり、中性的なヴォーカル&選りすぐられた数少ない音符で表現するバラードで一躍時の人となった。しかし50年代後半には麻薬の使用でアメリカから逃げるようにヨーロッパへ移住、その後はイタリアにて収監、イギリスやドイツからも追放されてしまう。やがてアメリカに帰国後は音楽活動を続けていたものの1966年に受けた暴行で口の中を損傷、華々しかったキャリアは転落していく事になる。それでも尚音楽活動を続け1970年代後半から再びヨーロッパにて活動を再開するのだが...

 

「マイ・フーリッシュ・ハート」

映画「マイ・フーリッシュ・ハート」は、そんな彼の栄枯盛衰における人生ラストのにスポットを当てた映画。1988年5月13日、アムステルダムの宿泊先のホテルの窓から落下し死亡、駆けつけた刑事ルーカスの捜査から次第に明るみになるチェット・ベイカーの二面性&心の闇は自分が置かれている状況と重なりそこに自身の終焉を重ねる事になる。

 

映画冒頭に「実際の出来事から着想を得たフィクションです」と断りがあるように作品は終始フランスノワール&叙情的な雰囲気にて刑事目線で展開。人間誰しもが持っている心の奥底に潜む善と悪、天使の言葉と悪魔の囁きと言った葛藤と、時折差し込まれる回想シーンのベイカーの有名な叙情的な楽曲が相まって

 

観ているこっちも気分がだだ下がり←レビューやm

 

 

 

しかし彼がトランペットを吹けば周囲の雰囲気はガラリと変わる。本人激似の役者さんとプレイ映像は素晴らしい!←メーキャップ!?

劇中で彼のマネージャーが「音とリズムは魂の奥底に通じる道を探している。チェットはその道を見つけて届けたんだ」と語るシーンがある。ある時は暴力的に彼女を支配しようとさえしていたドラッグに溺れた私生活には決して共感出来るものでは無いのだけども、千歩譲ってw純粋だったのかなと。刑事が彼の軌跡を辿る中で彼の音楽に触れて良い思い出が無意識に溢れ出す名シーンを見ると、ベイカーはトランペットを吹く事で自身と共に聴衆の魂と音楽を結びつけた気がする。彼の楽曲をある一定の方向から表現した映画色の強い見事な作品。

 

「ブルーに生まれついて」

 

前述した暴行によって前歯を全部失って以降のキャリアの危機から復活を支えた彼女との伝記物。ベイカーを演じるのはイーサン・ホークで、↑の作品が本人激似だった事から最初は違和感があったけど終盤には完全に無くなってしまっていた。

 

冒頭でのマイルス・デイヴィスディジー・ガレスピーらと名門ジャズクラブでの夢の共演→ところがマイルス・デイヴィスに「まだ早い」と言われるシーンが最後まで尾を引く状況で、当時の黒人vs白人&ライバルや父との確執なども交えて描く晩年の悲しい復活劇。この映画でも本能の赴くままに生きる姿が表現されていたのだけど、こちらは王道の伝記物で当時の彼女とは良い関係が続き本人の努力も見ていて安心。ラストは復活の為に再びマイルス・デイヴィスらを前に演奏する事になるのだが緊張のあまり....

結果は見てのお楽しみ。

 

ちなみに劇中ではあまり良い関係として描かれていなかったマイルス・デイヴィスとの仲は、白人だと言うだけで大衆人気を獲得している状況を快く思っていなかったが、ベイカーの演奏や人間性そのものは高く評価していたらしい。Wikiより

イカー自身もマイルス・デイヴィスのスタイルに強く影響を受けているとの事なので互いにリスペクトしていたのだろう。

 

 

目を閉じて聴くと人生の大先輩である女性から優しく諭すように語られている雰囲気になる不思議。絞った音での繊細な感情の表現は素人ながら思わず聴き入ってしまいます。

こちらは亡くなる1年前の東京公演の様子。「マイ・フーリッシュ・ハート」を見てこの映像を見るとなんか堪らんな〜。←だから、もうレビューや...

今日は終日ジャジーな気分に酔いしれるのでした。笑

 

ところでチェット・ベイカーは譜面はあまり読めず?直感的に演じてここまでの功績を残したとの事。生涯で100枚以上のアルバムを作成した40年以上に及ぶ偉大なキャリアの要因に少しだけ触れる事の出来る良作映画2本でした。(amazonプライムビデオレンタルっす)尚、

 

 ※映画の基本情報は各自調べて下さい。←..