入場
前日のベガスに続き来日した名物リングアナ、ジミー・レノンJrによる見事!な紹介で最初に登場したのは挑戦者ルイス・ネリ選手。ラップの曲は生歌で、どこぞの歌手を引き連れての入場だ。会場の演出が一段上がり、現場もブーイング混じりで更にヒートアップ。続いていよいよ!真打登場。ステージが一旦暗転したかと思うと大型スクリーンは真っ赤に染まり、事前予告の無かった布袋寅泰氏による「バトル・オブ・モンスター」のギターイントロで入場スタート。ステージの炎の演出に加え花火までぶち上がる(笑)ド派手な登場に4万4千の井上尚弥ファンの心は一つになった。
試合開始!!
2人がリングインすると両国の国家演奏→ジミーレノン氏による正式な紹介がスタート。入場時、井上選手のどこかこわばった表情には一抹の不安が残ったのだけど、両国国家の演奏を終えジミー氏による「ニッポンノミナサンコンバンワ!!」からの名文句「イッツ!ショータイム!!」ならぬ「イッツ!!プライムタイム!!」が私の緊張をほぐしてくれた。
がっ!!!!!!!!!!!!!!!
開始早々井上選手の右のオーバーハンドの強振→その後のねり選手の左フック強振と言う、1R早々、共に渾身の大ぶりを撃ち合う2人を見て再び緊張状態へ。井上選手が珍しく序盤から飛ばし対するネリ選手も果敢に応戦している。この2人には慎重な出だし&様子見が無い!!
しかも!!!!!!!!!!!!!!
再度井上選手の右オーバーハンドVSネリ選手の左オーバーハンドが炸裂。互いにやられたらやり返す両者一歩も引かない展開からの....
まさかの井上選手のダウン!?
この時の衝撃と来たら、もう2度と味わいたくないほどの嫌ーな衝撃。何が起こったの?と言う疑問に加えて全く予想していなかった展開が目の前で起こり、同時に信じていたものが全て失われる想いが入り混じって頭の中は大混乱。世界中のボクシングファンが一斉に変な声が出る衝撃的瞬間だっただろう(笑)。しかし!世界中が大混乱の中、ただ1人冷静であったのはなんと!!他ならぬ井上選手。直ぐには立ち上がらず片膝を付いてレフェリーの指をじっと見つめ8カウントまで待って立つ。
こんな人間他にいるのか?
その後のかわし方&捌き方もお見事で、無理に応戦せず足と体を上手く使ってパンチをいなし、隙があればカウンターを打ちつつ相手の勢いを止める。打ち始めたら止まらなくなるあのネリの突進を止めると互いに向き合ってニヤリ。そしてようやく鳴った1Rのゴング、会場のどよめきは続き何とも得体の知れぬ衝撃がドーム全体を覆っていた。
その後インターバル中の井上選手の表情を見ると時折笑顔。やってしまったな〜と言う感情も入ったその笑顔を見て一安心。2R開始ゴング後の仕切り直しに取れる表情が更に安心できる材料となったのだけど、プロ入り後人生初めてのダウン、果たしてその影響は?見ている側からするとネリの脅威は以前保ったままで全く気が抜けない状態だ。
覚醒した井上選手
2Rが始まるといつもの井上選手の構え&距離に戻った。しかもそこからギアが一段上がったのが分かる軽やかでテンポの良いステップ+世界一とも言えるジャブの攻撃が始まる。対するネリ選手はようやく反撃を開始するも全てがかわされ、打とうとすればジャブを喰らう、打つとカウンター&反撃、待ち構えているとジャブ、迷っているとジャブといった具合に井上選手の言う「相手に何もさせずに勝つ」&「打たせずに打つ」を身を持って体験する事になる。そして2R後半、意を決して反撃に出てきたネリ選手の隙を突く見事なショートフックのカウンターが炸裂!してダウン!!試合は振り出しに戻った。
3Rに入るとワンツーの攻撃からワンツースリーの攻撃に変化。相手の前手を払う力も増しノーモーションのストレート攻撃も開始。もうこうなると手がつけられない。何をやってもかわされ次の手を迷っている間に2手3手先を走り始める井上選手。上下左右からありとあらゆる攻撃が飛んで来る。とは言え、実はこの記事、既に3度以上試合を見返しつつ書いていて(笑)現場では終始緊張しっぱなし。たまーに大ぶりしてくるネリ選手の強振フックが出る度に肝を冷やしながら観戦しており、5Rのネリ選手の2度目のダウンまでは初回におけるまさかのダウンをずっと引きずっていた。しかしながらラウンドを重ねるうちにいつもの動きに戻ったのを確信しつつ、ネリ選手の2度目のダウンの際は思わず「ネリ!!立てー!!」の咆哮(アンジー談)。もっと試合が見たい!もっと豪快にKOしてもらいたい!と言う思いがつい言葉に出てしまっていた。実際会場全体がイケイケムード全開に変化したのは4R後半の井上選手の煽から。ラウンドを重ねるにつれ会場の緊張はいつしか「いつ、どうやって倒すのか?」の期待に変わって行った。
5Rにおけるネリ選手の2度目のダウン。その頃には波状攻撃となっている井上選手の勢いは止まらず、中間距離では何も出来ないと感じたのか意を決して接近戦を挑んだ結果またしもショートフックのカウンターをもらうのだけど、驚いたのはその後のネリ選手の動き。あれだけの攻撃を受けても尚前に出る姿勢はまさに戦士。試合前に大口叩いて、いざ勝負が始まると最初から何も出来ない選手がほとんどだった過去の井上戦。しかしネリ選手は一歩も引かず臆する事なく真っ向勝負を挑んだのだ。その姿勢は6Rになっても変わらず、ダメージが残るパンチを何度貰っても攻撃の姿勢を緩めなかった。その結果、ラストは豪快に吹っ飛ぶのだけど、どちら側から見ても潔い最後。興行全体を通して見ても
こんなドラマティックで面白い試合他にある?
一部の某メイなんちゃらwをはじめアンチ井上サイドは「アメリカで試合しろ!」と言う。本場アメリカに来て、アメリカのルールに従って強さを証明しろと吠える。しかしそんな選手達の試合で今回の試合内容に勝るものが一つでもあるだろうか?と思う。場外乱闘&トラッシュトーク&破天荒な私生活をさらけ出す、それを見るのは確かに話題にはなるし一部楽しめるところもあるにはある。でもいざ試合となると、相手が手を出すまで絶対手を出さないと言う所謂「塩試合」がほとんどで、逃げ回ってたまにポイント取って判定まで行って勝つしょーもないスタイル(実力はあるのに)。ネリ同様、井上選手もまた開始早々前のめりに攻撃に打って出た結果、まだ見切っていない&見えない所から来るパンチをもらってしまった。でもそれは、我々ファンに魅せる為に命を張った結果だ。格闘技とボクシングの真剣勝負にて「魅せる」事をやれるのはプロレスラーとほんの一部の選手に過ぎないのです。
こうしてまたしても前回の試合を上回る(興行的&試合的)結果を残した、もはや形容する言葉さえ見つからない井上尚弥選手。その要因の一つになったネリ選手の奮闘も強く印象に残る大会であった。
いやーそれにしても、試合後のインタビューにて「たまにはこんなサプライズもどうでしょう?」と笑っていた井上尚弥選手であるが
二度とゴメンだ!!
いやホント。