boulangerieの暇つぶし

元パン屋で都内タクドラの雑記。パン、料理(自炊)、音楽、映画、インテリア、酒、車、旅行...元嫁と質素な楽しい暮らし。

酵母

 先日こちらの記事にて読者さんとちょっとしたやり取りがあった。

boulangeriemanna545.hatenablog.com

私の勘違いから→偶然の出来事と言う流れは結果オーライで良かったのだけど、ご質問に答えられなかったので(元)現場の意見が参考になればと思って記事にして見る。

 

酵母

パンに適した酵母の発見&解明は19世紀以後(1861年)、それまではビール酵母などを利用していたのだがこの発見をきっかけに20世紀になると大量に工業生産される技術が確立する。

 

・植物学上の微生物の分類としては隠花植物系の菌類に属し、その菌類の中では真正菌類→不完全菌類の中の酵母に分類。(食品に関する微生物はかび、細菌などもあるが別の分類)

酵母と言ってもその数は数千種類に及び中でも最も製パンに適した物が単一で培養され市販化されている。(近頃は〇〇酵母と言った具合に地域名が付いた新たな酵母の発見もある)業務用も市販の酵母イースト)も元はほぼ同一の酵母と言って良いでしょう。ところで..

 

業務用酵母

 

イーストを取り扱っている会社で業界で有名どころと言えば、オリエンタル酵母工業、鐘淵化学工業、協和発酵、三共フーヅ(オリエンタル工業とは業務提携)などがあり、ドライイーストはルサッフル社(日仏商事とエキスパートパートナー)、オリエンタル酵母工業などがある。その他各社からそれぞれ4〜5種類の用途に合わせたイーストが出ているので各お店では50〜60種類の酵母から自店に合った商品を選択する事になる。

 

元はほぼ同一の酵母とは言え酵母以外に添加される物質は各社それぞれ異なる。(タンパク質、炭水化物、廃糖蜜(培地)の成分など)結果、冷凍耐性が高い物、耐糖性が高い物、ハード系に適した物などがある。

 

実情

 

以前勤めていた会社では会長が酵母製造関系の技術会社出身であった為イーストの種類がとあるメカーに限定されていた。よってイーストの種類を変更したのは独立以降であってその違いに気付いたのも自分でレシピを作成するようになってからだった。また、その他のお店の事情を聞いていると、小麦粉の種類は頻繁に変更しそれぞれこだわりがあるのに対し、イーストの種類に関してはどこも大抵一つか二つのメーカーを選択。レシピ毎にイーストの種類は若干変えるけどもメーカーまで変えることはほとんど無い。

 

メーカーによる違い

 

発酵力や発酵のスピードが異なる点が一番大きい。数百種類のパンを毎日何万と焼くとなると分単位の工程が必須で、味よりもイーストのメーカーが変わっただけでレシピ&工程が崩壊し結果として風味が劣る。

 

結論

 

参考になりませんね。笑

(いや、申し訳ない...)

 

 

イーストの変化によって発酵力が激変するのは確かで、非常にリッチなパンに対してK社のイーストからS社のイーストに変更したら生地のまとまり具合から違って本来のレシピ通りに工程が進まず難儀した事を思い出した。しかしパン生地のどの成分が、イーストのどの成分に反応してこの違いを生むのだろう?と言うのは粉会社の技術部門などで専門的に研究を進めるならともかく、稼働中の店舗にて実証実験的に成果を確かめるのはとても無理なお話。発酵力の差から結果的に味の違いは出るのだけども、これはイーストの種類(商品の)によっての味の違いでは無かった。よって家庭の製パンにおいては〇〇酵母(自家製の天然酵母含む)とドライイーストによる味や風味の差は分かると思いますがメーカーの差を感じる事は難しい。また、〇〇酵母系となると、そもそも工程から大きく違ってくるので(発酵力が弱く時間がかかる)酵素の分解によって出来上がる副産物が自然と異なってくる。ドライイーストでも微量で長く発酵させれば似た風味は出せるので、この事によってもメーカーによる味の違いの要因を特定するのは困難と思いました。

 

ただし、メーカーを変えて見た時に私が現場で感じた事は 体感出来るかも?場合によっては変更後の方が調子が良いぞ!美味しいぞ!となるかもしれませんが逆の現象もまた然り。酵母の発酵はさまざまな微細な環境の変化が作用しますのでデータを取って(その時の室温や湿度など)パンの出来上がりの変化を楽しむところまで行くと、それはめでたく沼にハマった状態です。笑

 

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ラストハンバーグ

これぞワンパン。笑!!